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~パンと塩の話~

こんにちは!上原です! 最近では家庭でパンを焼くことが珍しくなくなりました。そのためご存じの方も多いかと思いますが、パンには四大原料と呼ばれるものがあるんです。  小麦粉・塩・イースト・水がその四大原料なのですが、今回はそのうちのひとつである「塩」について書いていこうと思います。

まずはじめにパン作りにおける塩の役割ですが、大きく分けて三つの効果を発揮してくれます。

 
一つめは、何と言っても味付けの役割ですね。  パンに限らず、食品にとって塩味というのはほんのわずかでもあるのとまったくないのとではその差は歴然です。

二つめは、生地中のグルテンを引き締めて適度なコシを与えてくれる役割です。  塩を入れ忘れた生地は、仕込んでいる段階でも目で見てわかるくらい、ハッキリと違いが出ます。

最後に、イーストの暴走を抑えてゆっくり、じっくり発酵が進むよう調整してくれる役割です。(これまた、味に関係することですね)  この「ゆっくり、じっくり」というのが、パンにとってとても重要なポイントで、その間にパン生地は発酵による旨味をしっかり蓄えていくんです。  無理やり短時間で作ったパンがあまりおいしくないのも、我々パン職人の朝が早いのもそのためなんですよ。

さて、そんなパン作りに欠かすことのできない塩ですが、パンを作るときの塩の選び方や、使い分けについて質問を受けることがあります。  これについては、人為的に味の調整をされた塩でなければぶっちゃけ何を使っても構いません。 なぜなら、高価な塩を使ったからといってそれだけでパンがおいしくなったり、安価な塩だからといってパンがまずくなったりはしないからです。赤穂の天塩でも、ゲランドの塩でも、シママースでも、効果に違いはありません。

もちろん、塩専門店に行けば美味しい塩はたくさんあります。 それぞれに個性もあるので、焼肉・焼魚・お寿司や天ぷらのように、塩で食べる料理は塩の味の違いで僕たちの舌を楽しませてくれます。 ただ、パン作りに関しては味の違いよりも、自分が使用する塩の塩化ナトリウム含有量を把握して、正確に計量した上で配合することがおいしいパンを作る重要なポイントになります。

塩はとても吸湿性が高く、湿気を吸った分重たくなります。そのため、ご家庭で塩が湿気ているなと感じた時はフライパンなどで一度煎ってからふるいに掛けサラサラにして、パンやお料理に使っていただくことをおすすめします!

最後に僕がまだまだ小僧の頃に先輩から言われた有り難いお言葉を。  『上原ぁ!塩だけはちゃんと計れよっ!!』  いやいや、全部ちゃんと計ってますから。。。

では、また次回!

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人類と小麦の話

こんにちは。今回はパンの主要原料のひとつであり、僕たちがこだわっている「小麦粉」について少し書いていきたいと思います。

 約1万年前にはすでに栽培が始められていたという小麦ですが、 今では世界各国で栽培されていて、その種類はなんと1万種以上と言われています。 そして紀元前3千年頃の古代エジプトでは、発酵パンの原形のようなものをすでに食べていたと言うのだからビックリですね。

 もちろんそれは現在僕たちが食べているようなパンとは違うでしょうけど、その製造技術と共に世界中に広まり、なおかつ5千年もの間人々に食され続けている食品って他にあるんでしょうか?

 現在、麦麦では国内製粉会社が販売している多種多様の小麦粉の中から作りたいパンのイメージに合う粉を選定し、ブレンドしています。 小麦粉それぞれの特性を把握して、個々が持つ良さを引き出す配合や製法を組み合わせると大袈裟ではなく無限の可能性を秘めています。パン職人として、そんな作業は大変でもあり実に神秘的で興味深く感じる一面でもあるのです。

 さて、そんな人類最古の作物のひとつとされている小麦ですが、今僕がメインで使っている小麦の中にカナダの1CW(№1 Canada Western)と呼ばれている種類の小麦があります。
 パン用小麦の生産国として有名なカナダですが、その銘柄・等級の区分に品種による条件を設け、厳格な格付けのもと世界最高級、最高品質と称される1CWを栽培しているのです。

 小麦自体は農作物ですので、製粉会社は自社製品の小麦粉の品質を一定に保つ為にいろんな小麦から挽いた粉をブレンドして常に安定した品質の小麦粉を我々に提供してくれているのですが、僕はあえて1CWを100%使用した小麦粉を使って食パンを焼いています。

 単一種の小麦粉は非常に繊細で扱いが難しいのですが、それでパンを焼くと仕上がりが驚くほどにキメが細かく、キラキラと輝くような白い肌で歯切れよく、なめらかな口どけと喉ごしの良さになります。食べるとつい笑顔になっちゃいますね。 これは小麦粉中に含まれるたんぱく質の量はもちろん、その質の高さを物語っています。

 あと特筆すべきは、その香ばしい香り。 もちろんパンを焼けばどんなものでも香りは立ちますが、それらは生地の配合に大きく左右されるのです。しかし、この粉で食パンを焼くと、どこか懐かしい小麦の香りがしっかりしています。 タイムマシーンがあれば、紀元前三千年の古代エジプトの人たちにも是非食べてもらいたいですね!

 ちなみに世界最古の巨大建造物で有名なピラミッドの語源は、三角に膨らんで焼けたパン「ピューラミス」に由来するのではないかという説が最も有力だそうですよ!

では、また次回!

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パンと仲間の話

はじめまして! 神戸御影にある食パン専門店 麦麦で、シェフブーランジェを任せて頂いています上原です! 今回は僕にとっての、パンと仲間の話をさせて頂こうと思います。

 僕がパン職人への道を志したきっかけなんですが、子供のころ食べたバタールのようなパンが凄く美味しくて、他の二つの候補と悩みに悩んだ末にこの世界に足を踏み入れたんです。(余談ですが他の二つの候補とは、すし職人と落語家でした。)

 自分がパン職人になって九年くらい経った時にわかったのですがこのバタールのようなパンは、生地に乳成分が入っていたんです。 ですので、厳密にはいわゆるフランスパンのそれとは言い難いのですが、とにかく美味しい。 そして何より日本中で次々と新作パンが誕生してはその姿を消していく時代に、何十年というロングセラーを誇っているんです! そこにフランスのエスプリは利いていないけれど、支持され続けているという事実。

 もちろんパン職人を続ける以上、トラディショナルな分野は実に奥が深く、難しく、魅了されることに違いはないので、そこに新しい価値、皆さんに支持される価値を加えていけたらなと思っています。

 話は戻って…小さい頃に魅了されたバタールのようなパンを作っている会社に就職して多くの経験を積ませてもらい、パンづくりに関する理論や原材料に関する知識と技術、そして今も僕がモットーとしている『製品を以って世に問う』の精神を学ばせて頂きました。 それ以来二十数年にわたり、いろんな会社やお店でさまざまな勉強とチャレンジをさせてもらいながら今に至ります。 多くのパンとの出会いを通じて、同時に多くの人との出会いとご縁がありました。

 今でもずっと尊敬してやまない、二人の偉大な師匠。 先輩後輩はもちろん、小麦粉や塩、酵母といった各原材料の専門家の方々、 機械技術の専門家の方々、今のお店で一緒に頑張ってくれている皆との出会い。 そして何より、僕が作るパンを支持してくださる本当に多くのお客様との出会いが在ってこそ今の自分が在り、今の僕のパンが在ります。

 きっと、どんな仕事でも一から十までたった一人で完結することは難しいと思いますし、仲間の存在は本当に有難いですね。

 ちなみにこの国では同じ目的、目標に向かって苦楽を分かち合った仲間のことを『同じ釜の飯を食う仲』なんて表現をしますよね。 会社のことを英語でcompanyと表しますが、語源はラテン語の『共に(com)パン(panis)を食べる仲間(~y)』なんですよ!

 こんな風に、パンを通して多くの仲間に支えて貰っている僕ですが、これからもパンという作品で皆さんに恩返しが出来たらなと思っています。